川上未映子の『黄色い家』が今、多くの人の心をつかんでいます。
2024年本屋大賞にノミネートされ、第75回読売文学賞(小説賞)も受賞した本作。
一体どんな物語なのでしょうか?
自然に引き込まれる物語
物語は、十七歳の少女・伊藤花が親元を離れるところから始まります。
彼女が向かった先は「黄色い家」。
そこには、花と同じように家族との関係に悩みを抱える少女たちが暮らしていました。
母親の彼氏に大切な貯金を盗まれた経験を持つ花。
それぞれに複雑な事情を抱えた少女たち。
彼女たちは生きていくために、スナックを始めることを決意します。
でも、やっとの思いで作り上げた居場所は、ある女性の死をきっかけに揺らぎ始めます。
追い詰められた少女たちは、危険なカード犯罪に関わっていくことに。
そこから物語は、まるで暴走する列車のように、予想もしない方向へと疾走していきます。
心に刺さる現代の風景
この物語のすごいところは、少女たちの行動を「悪い子たちの話」で終わらせていない点です。
どうして彼女たちがそんな選択をせざるを得なかったのか。
その背景にある社会の問題まで、しっかりと描いているんです。
特に印象的なのは、主人公・花が持つ「黄色」へのこだわり。
その色への思いには、彼女の希望も不安も、全部詰まっているように感じられます。
他人事じゃない、私たちの物語
家族って何だろう?本当の居場所って何だろう?お金がないことは、その人の価値を決めるの?
この物語は、そんな誰もが考えたことのある問題を投げかけてきます。
でも決して難しい話として突き放すわけじゃありません。
スピーディーな展開と、まるで友達の話を聞いているような生き生きとした描写で、自然と物語の世界に引き込まれていきます。
もっと多くの人に読んでほしい理由
この物語は、私たちの社会の見えにくい部分を、優しくも鋭く照らし出しています。
本を読む時間がなかなか取れない人には、通勤や家事の合間にオーディブルで聴けるという選択肢もあります。
どんな形でもいい。
この物語が伝えようとしている大切なメッセージが、もっともっと多くの人に届いてほしい。
そんな思いでいっぱいになる一冊です。